基礎知識 2022.03.03
【5分解説】法人向けPPAモデル(第三者所有型)とは?導入のメリット・デメリットについて解説!
「脱炭素化」が世界的なトレンドとなり、日本も2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする目標を掲げています。この流れを受けて、「経済性」、「気候変動問題」、「企業価値」といったキーワードが注目され、化石燃料から再生可能エネルギーへのシフト、CO2の削減、SDGsの推進などが話題となっています。
その一つの対策として、「PPA(第三者所有型)」モデルによる太陽光発電が主流となっています。
このコラムでは、PPAの基本的な情報から始まり、その仕組みやメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。ぜひこのコラムを参考に、PPAについての理解を深め、再生可能エネルギーに関する施策を考えてみてください。
PPAモデル(第三者所有型)とは?
PPA(第三者所有型)とは、電力の生成者と消費者の間で結ばれる「電力販売契約」を指します。これは「第三者所有モデル」とも呼ばれ、初期投資や管理コストを気にせず、リスクを抑えつつ太陽光発電を利用できるメリットから、ここ数年で利用する事業者が増えてきています。
PPAの仕組みについて解説
PPAモデルは、事業者が所有する土地や屋根に、発電事業者が太陽光発電設備を設置し、その管理と所有を担当します。そして、そこで発電された電力を、土地や屋根を所有する事業者が購入する形をとります。つまり、発電事業者への支払いは、実際に利用した電力量に基づくものとなります。
PPAの種類
PPAには、大きく分けて「オンサイトPPA」「オフサイトPPA」の2つがあります。その2つのPPAモデルの仕組みについて詳しくご紹介します。
オンサイトPPA
オンサイトPPAとは、事業者が自身の保有する土地や建物の屋根に太陽光発電設備を設置し、その発電した電力を自身の施設で使用するモデルを指します。この方式では、直接自身のエネルギー需要を再生可能エネルギーにより賄うことが可能となります。
オフサイトPPA
オフサイトPPAとは、発電施設が事業者の敷地外に設置され、その発電した電力を送配電線を介して事業者の施設に送電し使用するモデルを指します。この方式では、自身の保有する土地や建物に発電設備を設置する必要がなく、遠隔地に設置した発電設備から電力を購入することが可能となります。
自社所有型との比較
これまで、自社で太陽光発電システムを購入し設置する自社所有型が主流でした。この方式は電気代の削減などのメリットがありますが、その一方で初期投資としての設置コストが高いという課題もあります。
PPAモデルと自社所有型の違いは以下の表を参考にして下さい。
PPAモデル | 自社所有型 | |
---|---|---|
所有者 | PPA事業者 | 自社 |
初期投資 | なし | あり |
メンテナンス費 | なし(初期投資に含まれる) | あり |
契約期間 | 主に15年以上 | 主に10年以内 |
電気料金 | 自家消費分は有料 | 自社消費分は無料 |
上記の表から明らかなように、「初期投資を抑えたい」「メンテナンス費をゼロにしたい」企業にとってPPAの導入は適しています。さらに、償却資産税等の観点から、自社の資産として太陽光発電を所有したくない企業にもPPA導入は有益です。
PPAモデル(第三者所有型)のメリット4つ
PPA、自己投資などの活用方法がある太陽光発電システムですが、PPAモデルについてのメリットを4つご紹介いたします。
①太陽光発電システムの初期費用・維持費用が省ける
太陽光発電設備を初期費用ゼロで導入することが可能です。電力会社からではなく、PPA事業者から電力を購入することで、電力購入単価を低く抑えることができます。
例えば、現行単価が1kWhあたり15円の場合でも、太陽光発電設備を導入すれば単価は13円になり、節電コストは2円となります。これにより、年間約40万円程度の電気料金を節約できます。
さらに、導入した太陽光発電設備のメンテナンスは全てPPA事業者が行うため、自社での維持管理やそのリスク・費用を負担する必要はありません。
②再エネ賦課金が発生しない
再エネ賦課金は、正式には「再生可能エネルギー発電促進賦課金」を指します。これは再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)で発電した電力が電力会社等に買い取られることを国が保証する制度で、その買取費用の一部を利用者から賦課金として徴収するものです。
PPAモデルでは、自家消費のために太陽光発電で電力を発電しますので、再エネ賦課金は発生しません。その結果、電気代の節約につながります。再エネ賦課金は年々上昇傾向にあるため、電気料金を押し上げる要因の一つとなっています。
③事業継続計画(BCP)対策ができる
PPAモデルを利用して自家消費する電力は、事業継続計画(BCP)対策にも活用可能です。BCP対策とは、企業が災害などの緊急事態時に事業を続けられるように事前に方針を決定しておくことを指します。
具体的には、太陽光発電システムの自立運転機能と、蓄電池を組み合わせることで非常用電源として活用することができます。このような対策は、緊急時の被害を最小限に抑えるために非常に重要となります。
④オフバランス化ができる可能性がある
オフバランス化とは、企業の資産や取引を財務諸表上から切り離すことを指します。しかしながら、その可否は監査法人などの専門的な判断に依存しますので、十分な協議が必要となります。
ここでPPA(第三者所有型)モデルの太陽光発電の導入を考えると、一般的には発電設備はPPA事業者が所有するため、企業が設備を資産として計上する必要はありません。つまり、企業は太陽光発電を導入してもそれが財務諸表上の負債になることはなく、オフバランス化が可能になるメリットがあります。
この結果、大きな初期投資や維持管理費を心配することなく、太陽光発電を導入できます。
さらに、太陽光発電を自社の資産とせずに運用することで、財務状況に大きな影響を与えずに温室効果ガスの削減やコストの節約などの利点を享受できます。これは、特に財務諸表の健全性を維持したい企業にとって、大きな魅力の1つです。
PPAモデル(第三者所有型)のデメリット4つ
上記のようにメリットも多くあるPPAモデルですが、反対に、PPAモデルのデメリットについても4つご紹介いたします。
①長期的な契約になる
契約内容によりますが、PPAの契約期間は多くの場合、15年以上と長期にわたります。この期間中、太陽光発電設備はPPA事業者の所有となるため、使用者(需要家)による契約の解除や設備の処分は基本的には認められません。
しかし、一方で設備に起こる故障や損傷については、使用者の過失がない限りPPA事業者が全ての修理や交換を行う責任を持ちます。これは使用者にとって、設備の維持管理に関するリスクを軽減できるおおきなメリットとなります。
②契約終了後の維持費用は自社負担
契約期間が終了した後、太陽光発電設備は一般的にPPA事業者から使用者(需要家)へ譲渡されます。これにより、自身で生成した電力をしようすることで 電力料金の支払いが不要となり、電気代の削減につながります。
しかし、契約終了後のメンテナンスは使用者の責任となります。年間のメンテナンス費用は発電設備の容量によりますが、一般的に数十万~百万円程度が必要になることを考慮する必要があります。この維持管理費用は、PPA契約終了後のコストとして予め予測し、計画に組み込みことが重要です。
③自社所有型に比べて恩恵が少ない
PPAモデルを採用する場合、発電された電力の使用量に応じてPPA事業者に電気使用料を支払う必要があります。一方、自社所有型モデルでは自社で発電した電力を使用する際には追加のコストは発生しません。
この点を考慮すると、PPAモデルは初期投資が不要なため、導入段階での経済的な負担を軽減するという大きなメリットがあります。しかし、長期的な視点で見ると、自社所有モデルの方が経済的に有利であるという見方もできます。
④導入条件をクリアしなければならない
PPAモデルの導入には、いくつかの条件が必要です。PPA事業者によってその詳細は異なりますが、設置場所や発電設備の容量に関する要件などが存在します。契約期間が長期に渡るため、与信に影響を及ぼすこともあります。したがって、これらの条件を満たすことができない場合、PPAモデルを利用できない場合もあります。
PPAを導入する際の注意点
PPAモデルのメリット・デメリットについてご紹介しましたが、導入の際は、以下の点も注意しておく必要があります。
契約条件の確認
PPAモデルの契約条件はモデルにより異なるため、太陽光発電設備で発電した電力の売電価格や、契約期間満了後のメンテナンス条件、システム譲渡、およびBCP対策についての条件や可否など、さまざまな要素を確認しておくことが重要です。
設置譲渡後のメンテナンス負担
契約期間が終了した後、設備のメンテナンスは需要家の責任となります。そのため、PPA事業者に引き続きメンテナンスを依頼するか、あるいは新たにメンテナンス会社を見つけることが必要になります。
設置譲渡場所、容量の確認
機器が故障したり、実際の発電量が予想した料より少なかった場合、そのリスクはPPA事業者が負担します。このため、十分な日射量が得られるか、積雪や強風の可能性がある地域では、設置前にこれらの要素をしっかりと確認することが重要となります。
まとめ
このコラムでは、PPAモデルの基本的な概念、メリットとデメリットをご紹介しました。PPAモデルの最大の魅力は、初期投資が必要ないため、比較的挑戦しやすいという点です。しかし、多くのメリットがある一方で、様々なデメリットも存在するため、導入を考える際は慎重な検討が重要となります。
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